仕事や日常生活に役立てるために、日頃から読書(一般的な書籍に加えて、雑誌・新聞・インターネット上の記事なども含みます)をする中で、以下のような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
- 色々な文献を読みたいけれども、時間がなかなか取れない。
- 少し難しい内容になると、十分に理解できている気がしない。
これらの課題を解決してくれる本が「本を読む本」です。
本を深く理解するための読み方や、本ごとに読み方を変えるという考え方などを、体系化した名著です。
限られた時間で学びたい人や、難解な本で挫折しやすい人向けに、特に役立つと感じた内容を3点解説します。
結論:役立つと感じた内容3選
- 読書には4つのレベルがある。
- それぞれの本に適した読み方を選択する。
- 本を理解する方法に王道はない。
これら3項目には関連があります。
先に紹介している内容の概要を把握することが、後に紹介している内容の理解につながります。
読書には4つのレベルがある
読書には4つのレベルが存在し、上位のレベルが下位のレベルを包含します。
- 初級読書:「その文は何を述べているか」を理解する
- 点検読書:「その本は何について書いたものであるか」を理解する
- 分析読書:本を完全に自分の血肉化するまで徹底的に読み抜く
- シントピカル読書:1つの主題について複数の本を相互に関連づけて読む
ここでは、各レベルの概要を解説します。
詳細を知りたい方は、本記事下部の「読書メモ」をご参照ください。
初級読書
読み書きできない人が、初歩の読み書きの技術を習得するための読み方です。
本書内では、中学校卒業時点で身に付いていることが望ましいレベル、とされています。
学生時代に現代文が苦手だなと思っていた方や、文章を読むこと自体が苦痛だと感じる方は、このレベルから一度見直しても良いかもしれません。
詳細は、読書メモの「3. 初級読書 – 読書の第一レベル」をご参照ください。
点検読書
限られた時間内で内容を把握するための読み方です。2つのタイプが存在します。
- 下読み:組織的な拾い読みをして、短時間(長くても1時間程度)で読むに値するかを判断する
- 表面読み:とにかく読み通す
下読みでは、目次で本の構造を把握したり、索引で重要な語句を把握したり、本文以外も最大限活用することが大切です。
表面読みでは、理解できる内容に集中して、理解できない内容があっても考え込むことなく、最後まで読み切ることが大切です。
また、1冊の本の中でも、各文章の内容・性質・難易度などによって、流し読みで十分なのか丁寧に読むべきかを判断する必要があります。
詳細は、読書メモの「4. 点検読書 – 読書の第二レベル」をご参照ください。
分析読書
本の内容に関して、系統立てた複数の質問をして、理解を深めるための読み方です。
個人的には、特に以下の2点が大事だと感じました。
- 著者が解決しようとしている問題を把握する。
- 理解できたかの基準は、ある事柄に対する著者の判断を、自分の言葉で言い換えることができるか、である。
本を読んでいる時に、細かい内容に意識が向いてしまい、著者が本当に伝えたいことや解決したい問題が見えにくくなることがあります。また、理解したつもりになっていても、書籍内の文章を単純に復唱しているだけということもあります。
理解を深める方法と同じくらい、理解できているかを検証することも大事だと感じます。
また、他の規則も大事かつ効果的なので、より深く十分な理解をするために、ぜひ習得したいところです。
詳細は、読書メモの「6. 本を分類する」〜「11. 著者に賛成するか、反論するか」をご参照ください。
シントピカル読書
本に明示されていない主題を、自分で発見して分析できるようになるための読み方です。
複数の文献を比較検討するにあたって、各文献に対して分析読書をして完全に理解する必要はない、という点が、重要に感じます。
自分に必要な情報を、的確かつ素早く抽出し、その情報間での対立点を整理して分析していきます。
詳細は、読書メモの「14. シントピカル読書 – 読書の第四レベル」をご参照ください。
それぞれの本に適した読み方を選択する
具体例
時間は有限なので、全ての文献に対して分析読書を行ったり、全てのテーマに対してシントピカル読書を行うことは非現実的です。
また、たくさん存在する本の中で、完璧に理解するべき本はごくわずかです。
それを解消する考え方が、「それぞれの本に適した読み方を選択する」です。
最近の私の例ですが、本に応じて以下のように判断しました。
- 本Aは拾い読みの結果、知りたいことが書かれていないと判断したので、それ以上読むのを止めた。
- 本Bは表面読みの結果、現在の自分には難解過ぎると感じたので、一度読み切ってから入門書で学習した後に再読することに決めた。
- 本Cは完璧に理解したいので、分析読書の規則に従って批評まで実施した。
精読しなければいけないという呪縛からの解放
私は、表面読みに対して、罪悪感や違和感のようなものを持っていました。
その原因は、学校で習った読み方とは異なる、という点に集約されると気が付きました。
学校では、「分からないことがあったら辞書を引いて調べよう」とか、「一度立ち止まってしっかり理解しましょう」などと教わってきました。
しかし、この本では、「だが、何事にも時機というものがある。まだその気が熟していないのにこういうこと(精読)をすると、読書の助けになるどころか妨げになってしまう。」と解説されています。
つまり、学校で習った読み方がそのまま通用しない理由は、本の内容に対する前提となる知識や理解度が異なるから、ということです。
個人的に学校教育は素晴らしいものだと思いますが、学校教育で教わった読み方は理解度に合った内容を読んでいるからこそ有効だということも理解しました。
これでかなり気持ちが楽になりました。
本を理解する方法に王道はない
お恥ずかしい話ですが、「本を読む本」を読むまでは、何かとっておきの方法があるのではないかと、心の奥底でかすかに期待していました。しかし、そんなことは決してありませんでした。
4つ全てのレベルにおいて、コツコツと積み上げていくほかはないのだということを理解しました。特に、分析読書は骨の折れる作業です。
しかし裏を返せば、「本を理解する」ということに対する今までの私の姿勢や考え方が、そのまま生きるということでもあります。当初の期待は良い意味で裏切られました。
学問に王道なし、と同様に、本を理解する方法に王道なしということを理解しました。
まとめ
それぞれの本にあった読み方を選択することが大事というのは、まさにその通りであると感じます。
そのためにも、点検読書の精度を上げることと、分析読書の各規則をどの程度まで実施するかの勘所を考えながら、今後も読書や学習に励みたいです。
また、「目次をもっと活用できそうだ」とか、「書籍内での言葉の使い方を意識した方が理解が進みそうだ」など、気づく点も非常に多かったです。
そして、現在進行形で子育てをしている身から、私がいちばん理解して実行するべきことは、子どもが初級読書を習得することを焦らない、ということなのかもしれません。
多くの方に、ぜひ一度読んでみてほしい一冊です。
読書メモ
- 第1版は1940年にアメリカで発行された書籍である。
- 読むに値する良書を、知的かつ積極的に読むための規則を解説している。
第一部 読書の意味
1. 読書技術と積極性
- 理解のための読書には、知識のための読書よりも積極性が求められる。
- 読み手は積極的に本にはたらきかけて、浅い理解からより深い理解へと読み手自身を引き上げる必要がある。
- 本を読んで学ぶことは、教わることではなく、自ら考えて発見することである。
2. 読書のレベル
- 4つのレベルが存在し、上位が下位を包含する。
- 初級読書:「その文は何を述べているか」を理解する
- 読み書きできない人が、初歩の読み書きの技術を習得するための読み方。
- 点検読書:「その本は何について書いたものであるか」を理解する
- 与えられた時間内に割り当てられた分量を読んで、内容を把握するための読み方。
- 分析読書:本を完全に自分の血肉化するまで徹底的に読み抜く
- 本の内容に関して、系統立てた複数の質問をして、理解を深めるための読み方。
- シントピカル読書:1つの主題について複数の本を相互に関連づけて読む
- 本に明示されていない主題を、自分で発見して分析できるようになるための読み方。
3. 初級読書 – 読書の第一レベル
- 一般的には6〜7歳ごろまでが、読みかた準備期であり、言葉をはっきり話すことができ、いくつかの文が正しい順序で使えるようになっており、他者と社会生活を送る基礎的な力も付いている。
- この時期に焦りは禁物である。この準備が不十分な状態で無理に読み方を教え込もうとすると、子どもが読書嫌いになりやすい。
- 読みかたの指導は準備が完了してからで良い。多少の時期のずれは気にする必要はない。
- 読みかた準備期を経て中学校卒業時点までに、ごく簡単な文章の読み方を覚え、文脈から知らない単語の意味を掴む技術を身につけ、読書体験を自分のものにできるようになる。
4. 点検読書 – 読書の第二レベル
- 点検読書には2つのタイプがある。
- 下読み:組織的な拾い読みをして、短時間(長くても1時間程度)で読むに値するかを判断する
- 表面読み:とにかく読み通す
- 下読みの手順
- 表題や序文を見る:本の主題を把握する
- 目次を調べる:本の構造を把握する
- 索引を調べる:重要な術語を把握する
- カバーの謳い文句を読む:時間がない時はここまでで及第点
- 議論の要と思われる章の要約を読む:章の最初か最後の要約が書かれていることが多い
- ところどころ拾い読みをする:本の重要と思われる箇所を中心に本全体を拾い読みする
- 表面読みのコツ
- 難解な本は、理解できることだけを心に留めて最後まで読み切る。
- 理解できない箇所で考え込んだり調べたりせず、脚注・註解・引用文献なども参照しない。
- 学校で習った読み方とは異なるが、それは本の内容に対する理解度が異なるからである。
- 再読すれば理解が深まるに違いない!
- 読書の速度は、本の性質や難易度によって読者がコントロールするべきである。
- 拾い読みにも値しない本もあれば、丁寧に読んで完全に理解する必要がある本もある。
- 1冊の本の中でも、それは同様である。
5. 意欲的な読者になるには
- 読み手が読書中に質問をし、読み進めながら自分自身で回答する努力が必要である。
- 本の主要テーマは何か
- 本の思考・主張・議論の要点は何か
- 本は全体として真実か(もしくはどの部分が真実か)
- 本の内容が自分にとってどのような意義があるか
- 読書はスポーツと似ている
- 複数の別々な動作を一つのまとまりがあるものにするためには、1つ1つの動作を全て忘れる必要がある。しかし、それらが別々の動作であることを忘れるためには、まずはそれらの動作を別々に学ぶ必要がある。
- 書籍内ではスキーを例に解説されている。
第二部 読書の第三レベル
分析読書には3つの段階がある。
- 第一段階には4つの規則があり、6章と7章で解説されている。
- 第二段階にも4つの規則があり、8章と9章で解説されている。
- 第三段階には3つの規則があり、10章で解説されている。
6. 本を分類する
- 1-1)本の種類を把握する。できるだけ早く、可能であれば読みはじめる前に把握する。
- 種類とは、フィクション or 教養書、理論的 or 実践的、歴史 or 物理学 or …、などである。
- 読みはじめる前に把握するには、点検読書が有効である。
7. 本を透視する
- 1-2)本全体の著者の意図や主張を、数行程度でまとめてみる。
- 本の骨格を理解する。書籍中の例が分かりやすい。
- 1-3)本の主要な部分が、どのような順序と統一性で全体を構成しているかを示す。
- 本の構成区分にこだわらずに、読者自身のアウトラインを作ることが重要である。
- 良い本は明確な構造を持ち、部分が機能的に関連している。
- 1-4)著者が解決しようとしている問題を把握する。
- その本が答えようとしている質問は何か、を理解する。
8. 著者と折り合いをつける
- 2-1)重要な単語を見つけ出して、著者がその単語によって表している意味を正確に理解する。
- 重要な単語は多くの意味を持つことが普通であるうえに、本の中でも複数の意味で利用されることもあるので、著者と読者が同じ意味で扱う必要がある。
- 重要な単語を見つける方法として、視覚的に強調されていたり、著者が定義や特殊な意味で利用していることを解説していたりする点に着目すると良い。
- 単語の意味を理解する方法は、前後の文脈から試行錯誤をして対象となる単語の意味をつかむことのみである。(書籍内では、『回り道のようでも、どうしてもこの手順を踏まねばならない。』と補足されている。)
9. 著者の伝えたいことは何か
※命題:ある事柄に対する著者の判断(肯定 or 否定)の表明
※論証:ある結論を導くための根拠や理由を示す一連の文章
※名辞:ある単語があらわす意味
- 2-2)最も重要な文に注目して、そこに含まれる命題を発見する。
- 一つの文が、常に一つの命題を表しているとは限らない。これは、単語には複数の意味が存在することと、文と命題がN対Nの関係になりうることが、要因である。
- 重要な文章を見つける手掛かりとして、表現や紙面上の強調に工夫がある点や、重要な単語が使われている点、などがある。
- 命題も単語の場合と同様に、前後の文脈から試行錯誤をして対象となる文章の意味をつかむが、単語と比して利用する文脈の範囲が広くなる。
- 文中の命題が理解できたかの判断は、自分の言葉で言い換えることができるか、である。著者の言葉から離れた「自分の言葉」という点が重要である。
- 2-3)一連の文章から基本的な論証を発見して組み立てること。
- 著者の意見を理解しただけでは、「はっきり根拠が示されていない限り、著者の命題は個人的な意見にすぎない」ので、読者は「AゆえにBと言える」というような「その命題をたてるにいたった理由」を理解しなくてはならない。
- 最初に、重要な論証を述べているパラグラフを見つける。見つからない場合は、様々なパラグラフから論証を構成する一連の文を集めて、論証を組み立てる。
- 著者が仮定しなければならないもの、論証によって立証できるもの、論証を必要としない自明なもの、を見定める必要がある。
- 2-4)著者が本の中で解決したことを検討する。
- 解決しようとした問題のうち、解決できたのはどの問題か。
- 解決の過程で新たに発生した問題や、解決できなかった問題は何か。
10. 本を正しく批評する
- 3-1)本の内容を理解した上で、賛成・反対・判断保留、の態度を明らかにする。
- 第一段階と第二段階が完了していることが前提である。
- 本の内容が理解できないということも、一種の批判的判断である。
- 3-2)反論する時は喧嘩腰にならない。
- 反論は筋道立てることが重要である。
- 3-3)反論は解消できるものだと考える。
- 読者の誤解と無知を解消すれば、大部分の反論を解消することができる。
- 理性的である限り、自分とは異なる意見でも認めることができる。
- 反対のみならず賛成の場合も判断の根拠を示し、知識と著者の意見の区別を明確にする。
11. 著者に賛成するか、反論するか
- 読者が著者の主張に反論するためには、以下のいずれかを立証する必要がある。
- 著者の知識が不足している
- 著者の知識が誤っている
- 著者の主張が論理性に欠ける
- 上記3点を立証した上で、著者の分析や説明に不十分な点があれば反論する。
- これにて分析読書の規則は全てだが、あくまで理想である。時間の制約もあり、点検読書までにとどめておくべき本も多いので、それぞれの本にふさわしい読み方を選択することが大切である。
12. 読書の補助手段
- 1冊の本に対して、まずは自力でできることを全てやり切ったうえで、補助手段の力を借りる、という順序が大事である。
- 補助手段は以下の4つである。
- 読書に関連のある自身の経験
- 読書の手助けとなる他の本
- 相互に関連のある本を、書かれた時間的な順序に沿って読む。「過去→現在」だけでなく、「現在→過去」の順序でも良い。
- 注釈書や抜粋
- 誤っていたり完璧ではない可能性があるので、頼りすぎないことが大事である。
- 辞書などの参考図書
第三部 文学の読みかた
13. 小説、戯曲、詩の読みかた
私の守備範囲外のため詳細には扱わないが、一通り目は通した。
第四部 読書の最終目標
14. シントピカル読書 – 読書の第四レベル
- 同一主題に対して2冊以上の本を読む方法である。
- 目的は、主題(読者の関心事)に対する真実に近いとされる共通意見を見出すことであり、各々の本を理解することや完璧な回答を得ることではない。
- まずは、集めた文献に対して点検読書を実施して、読むべき文献を絞り込む。
- 5つの段階がある
- 各文献から、関心事と関係が深い箇所を見つけ出す。
- 一冊に記載されている内容全てが関係が深いことは、基本的にはあり得ないため。
- キーワードについて、特定の著者に偏らない使い方を決める。
- 全ての著者が、同じ言葉を同じ意味で利用しているわけではないため。
- 関心事を解決できそうな一連の質問を作り、各文献から回答を得て、特定の著者に偏らない命題を立てる。
- できるだけ多くの文献から回答が得られる質問が良い。
- 回答を整理して、論点を定める。
- 回答が対立している場合は、対立意見を整理して論点を明確にする。
- 主題についての論考を分析する。
- 「それは真実か」「それにはどんな意義があるか」を問う。
- 各文献から、関心事と関係が深い箇所を見つけ出す。
15. 読書と精神の成長
- 学び成長するためには、自分の力以上の難解な本に取り組む必要がある。
- 二流の本は再読した時に色褪せて見えるが、優れた本は再読した時に本自体も読者とともに成長したように見える。
以上
